第1回:脚本・演出から【公演まで23日!】

さて、公演日まで一カ月を切りました。

みなさま、こんにちは。

本公演で脚本と演出を務めさせていただく、久野さいと申します。

こちらの特設サイトの【演出より】では、本公演「むちゅうのドリー」の物語世界をよりお楽しみいただけるような情報を発信していきたいと思います。


特設ページを作って作品情報を発信するのは、劇団笛の私たちの代では初めての試みです。

では、なぜ今回、このような試みを行うことになったのか?


それは、脚本担当(私)が上田秋成に憧れてしまっているせいです。

具体的には、古典や歴史など様々な要素をふんだんに取り入れながら外国文学を翻案し、何も破綻せず美しくまとめ上げた秋成の技を知ったとき、感動し、いや、興奮し、そうして、憧れ……小生意気にも「自分もあんなふうになりたい!」と……あとは、もうお分かりでしょう。

要するに、「むちゅうのドリー」には、さまざまなモチーフや典拠が存在します。もちろん、それらについての事前情報なしでも、お楽しみいただける物語となっています

しかし、さらに作品を楽しんでいただくためには? よりわかりやすくするためには? と考えたとき、これらについて、先に公開してしまった方が良いのではないかと、そう考えた次第です。

秋成はかっこよく隠していたようなことを、久野(私)は言っちゃう。ちょっと恥ずかしいですが、みなさまに楽しんでいただくためには、羞恥プレイもどんとこい。背に腹はかえられません。


作品情報とはいえ、当然ネタバレではありませんし、ほんのエッセンス程度です。豆知識広場くらいに考えていただければと思います。

「観劇前にあらすじ以上を知るのは嫌だなぁ」と感じられる方は、観劇後に「そういえば、あれって何だったんだろう…」と気になることがあれば、こちらのページに戻ってくる、という楽しみ方をしていただくこともできます。



さて、前置きが長くなってしまいましたが、記念すべき第1回のラインナップはこちら。

・「ひつじのドリー」について

・「かもめのジョナサン」について

それでは、参りましょう。



1.「ひつじのドリー」について

この作品の主人公のあだ名は、ドリーです。

あらすじの内容と「ドリー」という名から、察しの良い方はもうお気づきになったかもしれません。ネタバレというほどでもないことなので、明かしてしまいますが、そう、この「ドリー」、あの有名なクローン羊のドリーからきています。


クローン羊について、詳しく知ったのは、高校生のときでした。高校生の頃、私は非常に不真面目な学生だったので、生物の授業中はほとんど寝ていたのですが、おぼろげに覚えていることもあって、そのひとつがクローン羊の「ドリー」についてです。

1996年、スコットランドにあるロスリン研究所で、ウィルムットやキャンベルら科学者が、成体羊の乳腺細胞の核を用いて、哺乳類で初めて体細胞からのクローン個体の作成に成功しました。そのクローン羊こそが「ドリー」です。

初期胚からのクローンはドリー以前にもつくられたようですが、これは、親と子が全く同一の遺伝子を持っているとはいえません。両親の形質を受け継いだ子どもたちが、同じ遺伝子を持つことになります。

一方、体細胞からのクローンは親も子も同一の遺伝子を持ちます。ここでいう親とは、体細胞を提供した個体のことです。「ドリー」以降、ウシやブタやマウスでの実験が成功していったようですが、誕生しても、臓器や組織に異常が生じてすぐに死亡してしまうこともあったようです。

ドリーは5歳という異常な若さで関節炎を発症して衰弱し、6歳のときに進行性の肺疾患になり、安楽死させられました。2003年のことです。これらの疾患について、クローンが原因ではないという説明はついたようですが、当然、議論が巻き起こりました。

そんなドリーには、子どもがいます。名は「ボニー」。ボニーの誕生によって、ドリーには「正常」な生殖能力がそなわっていることが証明されました。つまり、ボニーは「普通」の仔羊として生まれたので、ドリーのクローンではありません。


ドリーについて知ったときに、私が抱いたのは、科学技術の進展そのものに対する畏敬や批判ではなく、常識を破壊する事件に直面したときの「人間」への関心でした。つまり、揺らぐ倫理への関心です。

ちなみに、「むちゅうのドリー」はSF的なクロージングの物語ではありません。SFを書くには、私はあまりにも科学的知見が狭すぎるので。



2.「かもめのジョナサン」について

さて、ここまででお気づきかと思いますが、私はもともと文学畑の人間です。上田秋成に憧れたと言ってみたり、クローンへの関心のあり方だったりから、そういうにおいがプンプンしていると思います。

「むちゅうのドリー」には、そんな私の趣味嗜好が反映されている側面もあります。

主人公のドリーは読書が大好きな女の子。

作中で登場する書名は、『かもめのジョナサン』です。もちろん、題名の通りに、主人公は、かもめのジョナサン。

そして、「むちゅうのドリー」には、「カモメ」と呼ばれる少年が登場します。彼は、ジョナサンにはなりきれなかったカモメ(人間)です。


『かもめのジョナサン』は、群れから追放されようとも、食うためではない飛ぶことの歓びを追い求め、自身の限界を突破しようとしたカモメの物語です。3章構成の物語として1970年代に発表され、作者の飛行機事故による瀕死体験から40年近くの時を経て終章を加えて完成版とされました。

私が読んだのは、新潮文庫の完成版で、五木寛之による創訳のものです。訳者による完成版あとがきに書かれているように、私もまた、『かもめのジョナサン』から連想したのは仏陀の最期でした。このことについては、また別の回でお話しましょう。

ドリーがこの本を読んでいるとき、彼女は12歳です。設定上、この時点で、2003年(羊のドリーが死んだ年)なので、『かもめのジョナサン』の完成版はまだ発表されていないことになります。ですから、彼女が読めたのは、Part3までの物語です。


もちろん、『かもめのジョナサン』を読んだことがなくても、「むちゅうのドリー」のご観劇になんの支障もございません。では、なぜ「かもめのジョナサン」についてという項目を作ってまで、このページで説明したのか?

それは単純に、私が『かもめのジョナサン』が大好きで、お薦めしたかったからです。とても面白い小説ですので、ぜひ、読んでみてください。


というわけで(?)、初回は以上です。冗長な文にお付き合いくださりありがとうございました。最後、かなり話がそれてしまいましたが、次回からは、もっと端的に、豆知識広場を繰り広げていきたいと思います。あと4、5回ほどの連載の予定です。

それでは、また次回。

(脚本・演出 久野さい)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

山口大学演劇サークル劇団笛令和六年度冬公演

『むちゅうのドリー』

日時  :2025年2月6日(木)19:00~/2月7日(金)18:00~

     (開演30分前から入場可能)

公演時間:約120分

会場  :クリエイティブ・スペース赤れんが ホールⅡ

     (山口市中河原町5-12)

入場料 :学生1000円 一般1200円 

     (当日は各300円増、ご予約は2025年2月5日までにお願いいたします)

連絡先 :e-mail   gekidanfue@yahoo.co.jp

                 X        @gekidan_fue

         Instagram @gekidanfue



 



劇団笛2024年度冬公演 公式ホームページ

山口大学演劇サークル 劇団笛 令和6年度冬公演「むちゅうのドリー」の特設サイトです。 公演に関する情報を発信していきます。

0コメント

  • 1000 / 1000