第4回:「柘榴」のはなし【公演まで2日!】

 公演初日まで、あと2日。お越し下さる予定の方は、ぜひご予約をよろしくお願いいたします。ご予約は明日2月5日に締め切らせていただきます。初日の6日の方が座席に余裕がございますので、ゆったりとご覧になれるかもしれません。もちろん、7日も大歓迎です。

 さて、前回予告したように、本日のテーマは「柘榴」について。柘榴というモチーフや、「むちゅうのドリー」に登場する柘榴にまつわる説話についてご紹介します。

・柘榴について

・鬼子母神について


1.柘榴について

実家の庭に、柘榴の木がありました。昔のことで、今はもうありません。実家の庭は、祖父と祖母が手入れをしていていました。といっても、ほとんど祖父の仕事でした。祖母に頼まれ、渋々といった体で、庭仕事をしていたのですが、それでも、土や木をいじったりするのは好きだったのではないかと思います。祖母が花を植え、祖父が庭木の剪定をし、私たちが雑草をむしる。そんな時間が、もう二度と手に入らぬものとして、記憶の中に柔い光を放って居座り続けています。田舎の家にしては狭い庭ながら、とても美しい空間でした。

かつては手入れの行き届いていた庭ですが、祖母が認知症を患ってからは、手入れの頻度が減り、今では、「荒廃」と呼ぶにふさわしい状態になってしまっています。狭い庭とはいえ、敷地全体で考えると、母一人で管理するには広すぎるし、祖父ももう年で昔のように動けるわけもなく、庭仕事をしてくれと頼む祖母も昨年に他界。帰省するたびに、掃除だけはして帰るのですが、この庭がかつてのような輝きを放つことはもうないのだろうと思うと、虚しくなります。祖父は庭仕事そのものも好きだったけれど、それをお願いする祖母のことも大好きだったのでしょう。あの頃の庭の輝きは、祖父の、祖母への愛情が成せるものだったのだろうと思います。

 柘榴の木があったのは、私が祖父母の家に住み始める少し前、まだその家に「遊びに行っていた」頃のことでした。浅黒い林檎のような色をした、小さな実のついた枝があって、何の木かと祖母に尋ねたら、「柘榴」だと教えられました。実を割ったときの、赤い粒のたくさん詰まったイメージはありましたが、実際になっているところを見るのは初めてでした。柘榴の木を、庭に植えるのは、縁起が良いとも悪いとも言われています。植えるか植えないかで、祖父と祖母は多少もめたようですが、祖母はその時、やっぱり植えて良かったと言っていました。

 柘榴の木が、縁起がいいと言われているのは、柘榴が子孫繁栄や多産のシンボルとされているからです。種子がたくさん詰まっているため、そのようなイメージを持たれています。また、古代ギリシャの伝承の中でも、柘榴は子孫繁栄や豊穣の象徴として扱われているようです。

 では、なぜ縁起が悪いとも言われているのか。「柘榴の木がある家は病人がでる」とも、「実(=身)が割れる」とも言われたりするようですが、「柘榴は人肉の味がする」というマイナスイメージがついていることも縁起が悪いとされる理由のひとつでしょう。「柘榴は人肉の味がする」という言い伝えは、「鬼子母神」の説話に由来します。


2.鬼子母神について

インドから来た神話が、中国で形を変えて日本に渡来し、そして日本でも独自の信仰の形がつくられたのが、この「鬼子母神」の話です。「むちゅうのドリー」の中にもこの説話が登場します。

 鬼子母神は、インドの神話の中ではハーリーティー。訶梨帝母とも書きます。鬼子母神の子どもの数には、五百人とか千人とか諸説はありますが、鬼子母神は、その大変な人数の子どもたちを養うために、人間の子を捕えて食べていました。釈迦はそれを見かねて、鬼子母神の子を一人隠します。釈迦は鬼子母神に、子を失う苦しみを実感させたのです。鬼子母神は狂ったようにその子を探し続け、釈迦に縋りました。釈迦は鬼子母神に、人々を脅かさないように教え諭します。鬼子母神はその教えを聞き入れ、子どもは鬼子母神のもとに帰ってきました。そして、鬼子母神は仏法の守護神、安産や子どもの守り神となりました。

 このときに、釈迦が、人肉を食べる代わりに人の肉の味のする柘榴を食べるように鬼子母神に勧めたというのは、日本で作られた俗説のようです。元の神話の中では、柑橘系の果実である吉祥果となっており、中国に入ってきたとき、吉祥果が何かわからず、仮に柘榴としたのではないかと言われています。それが日本にも入ってきて、さらに、「人肉の味がする」という話が付け加えられたのでしょう。

 受容の過程で、解釈に独自性や地域性が生まれ、原型が歪められていく伝承には、すごく関心があります。物語や思想が形を変えていくときはじめて、そこに息づいて動き出したって感じがしませんか?



さて、本日はこれで以上です。次回が最終回。おそらく、公演終了後の公開になると思います。

あと二日間、できる限りのことをして、皆様にお楽しみいただけるように、仕上げていきたいと思います。

皆様のご来場を、心よりお待ちしております。

(脚本・演出 久野さい)

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山口大学演劇サークル劇団笛令和六年度冬公演

『むちゅうのドリー』

日時   :2025年2月6日(木)19:00~/ 2月7日(金)18:00~ (開演30分前から入場可能)

公演時間 :約120分

会場   :クリエイティブ・スペース赤れんが ホールⅡ (山口市中河原町5-12)

入場料  :学生1000円  一般:1200円

     (当日は各300円増、ご予約は2025年2月5日までにお願いいたします))

連絡先  :MAIL gekidanfue@yahoo.co.jp

      WEB gekidan-fue.amebaownd.com

        X @gekidan_fue

    Instagram @gekidanfue  



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